これまで金沢が終点だった北陸新幹線が、今年の3月16日に福井県の敦賀(つるが)まで延伸されます。日本海に面した敦賀は冬の味覚の王者・越前ガニの名産地であるほか、日本海の玄関口としてさまざまな人や文化が行き交った歴史ある港町です。今回は北陸新幹線延伸を前にチェックしておきたい、敦賀のグルメ、名所を巡ってきましたのでご紹介します。
越前ガニだけじゃない! 食通に人気の冬の味覚「せいこがに」と地酒を堪能
日本海に面した敦賀は魚介の宝庫。特に福井県の漁港で水揚げされるズワイガニ「越前ガニ」は冬の味覚の王様として君臨する食材です。ズワイガニは山陰地方では松葉ガニ、石川県では加能ガニと呼ばれており、水揚げされる漁港によって呼び名が異なるのですが、好漁場に恵まれた越前ガニはズワイガニの中でも最高級品として知られています。
ちなみに体格の大きな雄のズワイガニで福井県の漁港で水揚げされるものを「越前ガニ」と呼び、写真のように黄色いタグがついているものが越前ガニになります。また、一回り小さいメスを「せいこがに(香箱がに)」と呼び、「内子」「外子」と言われる卵がたっぷりで、実は福井県人や食通の間では越前ガニよりもせいこがにが人気なのだそう。
今回は都内ではなかなか手が届かないせいこがにを思う存分味わえる敦賀の人気店『生け簀の甲羅』に伺いました。シーズン限定のメニュー「せいこがに丼」(4,500円)は、せいこがにをたっぷり2杯分使用した上に、さらにイクラ、錦糸卵、ガリをトッピングした豪華な丼に、味噌汁と香の物がついてくる充実の内容です。都内ではせいこがに1杯単品で同程度の価格設定であることを考えると、コストパフォーマンスの高さが窺えます。コクのある内子とシャキシャキ食感の外子、濃厚な蟹味噌と混ざり合ううま味たっぷりなカニの身に思う存分酔いしれられる、そんな贅沢丼です。
カニを食べる際に合わせたいのが、やはり福井の地酒です。同店にはお好み3種を選べる「日本酒3種 飲み比べ利き酒セット」(1,280円)もあるので、ぜひ一緒にどうぞ。ふっくら味わいが広がる「一本義 金印」やすっきり辛口な「黒龍 九頭竜」、なめらかな喉越しが特徴の「伝心 稲純米」などを飲み比べ、酒どころ福井の実力も感じてみてください。
・生け簀の甲羅
住所:福井県敦賀市金ケ崎4-1
電話:0770-47-6338
営業時間:11:00~15:00(L.O.14:30)、11月1日~3月末までのカニシーズン【月/火/木/日】11:00~15:00(L.O.14:30)、【金/土】11:00~15:00(L.O.14:30)、18:00~22:00(L.O.20:00)
定休日:水曜
敦賀に来たら外せないB級グルメ「ソースカツ丼」を体験!
越前ガニと同様、敦賀に来たら外せないのが『敦賀ヨーロッパ軒』。昭和14年創業の老舗で、福井のB級グルメとして親しまれているソースカツ丼を中心にメンチカツやピカタ、スカロップなどレトロな洋食が揃います。
名物の「ソースカツ丼」(990円)は、丼のごはんの上に豚肉のカツが3枚ものったボリューム満点な一品。薄い衣でカリッと揚がったカツは、ウスターソースに甘みと香りを加えた特製ソースで日本風な味わいになっています。予約不可の人気店なので、時間に余裕を持って訪れてみてください。
・敦賀ヨーロッパ軒 本店
住所:福井県敦賀市相生町2-7
電話:0770-22-1468
営業時間:11:00〜14:00、16:30〜20:00
定休日:月・火曜
豚骨+鶏ガラスープがたまらない「敦賀ラーメン」もチェック!
敦賀では50年以上前から「敦賀ラーメン」というご当地ラーメンが親しまれています。古くは列車の利用客や鉄道職員、バスの利用者などで、自動車が普及するとトラック運転手たちに屋台や店舗のラーメンが人気となりました。現在も国道8号線沿い(本町アーケード沿い)に3〜4店舗のラーメン屋台が並び、夜の8時ごろから深夜2時ごろまで営業しています。
敦賀ラーメンの特徴は、豚骨と鶏ガラを合わせたコクのあるスープ。2022年7月にオープンした『トリノセツリ』は敦賀で有名な本格割烹『お料理やまとも』が手がけるラーメン店で、現代風にアレンジした敦賀ラーメンがいただけます。
「鶏そば 醤油」(880円)は、親鳥のガラのみを使用しじっくり煮込んだあっさりとした深みのあるスープに、京都『麺屋棣鄂(ていがく)』のちぢれ麺を使用。さらにとうもろこし育ちの三元豚のロースを真空低温調理したレアチャーシュー、メンマ、ナルト、ネギがトッピングされています。和食の料理人が手掛けているとあり、とろみがありつつ上品でコクと深みのあるスープが印象的で、喉越しの良いちぢれ麺によく絡みます。
・トリノセツリ
住所:福井県敦賀市相生町6-8
電話:090-5681-9035
営業時間:11:00〜14:00、17:00〜20:00(火曜は昼のみ営業、土日祝11:00〜20:00)
定休日:毎月第4水曜
Instagram:https://www.instagram.com/torinosesturi202277/
敦賀駅前の公設書店『ちえなみき』で本の世界に迷い込む
敦賀にはグルメ以外の見どころも実はたくさんあります。敦賀市が整備し、丸善雄松堂・編集工学研究所が運営する新しいスタイルの駅前書店『ちえなみき』もそのひとつ。知の体系によって分類された書籍空間が広がる、本好きにはたまらない空間です。しかも誰でも無料で利用できます。
施設内の書籍はすべて閲覧、購入可能。さらに敦賀で人気のお茶屋『中道源蔵茶舗』の支店も併設されているので、こちらで「抹茶」(500円)や人気の「お濃茶パフェ」(1,100円)をいただきながら読書を楽しむこともできます。
『ちえなみき』が入っている駅前施設『otta』には、飲食店やお土産屋さんが立ち並んでいるので、観光拠点としてぜひチェックしておきたいところです。
・ちえなみき
住所:福井県敦賀市鉄輪町1-5-32 otta内
電話:0770-47-5606(10:00〜20:00)
営業時間:10:00〜20:00
定休日:水曜(祝日の場合は翌日振替休業)
北陸道の総鎮守『氣比神宮』でパワーチャージ
敦賀には702年に建立されたと伝えられる、7つの御祭神を祀る北陸道の総鎮守『氣比神宮(けひじんぐう)』もあります。主祭神「伊奢沙別命(いざさわけのみこと)」は「笥飯大神(けひのおおかみ)」、「御食津大神」とも称されており、名前からも分かるとおり食べ物の神様です。
今日では食べ物に限らず衣食住全般や海上交通安全にご利益があるとして、多くの人から信仰を集めています。旅の安全祈願、美食旅の祈願にぜひ挨拶しに立ち寄ってみては。
・気比神宮
住所:福井県敦賀市曙町11-68
電話:0770- 22-0794
交通の要衝、人道の港として栄えた『敦賀港』と『敦賀赤レンガ倉庫』
現在新幹線の駅舎の整備が進む敦賀ですが、古くから交通の要衝としての地位を築いています。
例えば敦賀港は、各地から大阪や京都へと物資を運んだ北前船の寄港地でもあります。また、明治45年から新橋(東京)〜金ヶ崎(敦賀)間で運行されていた、シベリア鉄道経由で日本とヨーロッパを繋いだ「欧亜国際連絡列車」の発着駅でもあり、陸路の要衝でもありました。
現在の敦賀港に構える『敦賀鉄道資料館(旧敦賀駅舎)』は、そんな「欧亜国際連絡列車」の発着駅として親しまれた敦賀駅舎を再現した建物で、誰でも無料で敦賀の鉄道の歴史を模型や資料とともに知ることができます。
そして敦賀港は「人道の港」という顔も持ちます。ロシア革命後の内戦によってシベリアで家族を失ったポーランド孤児や、杉原千畝氏がリトアニア・カウナスで発給した日本通過ビザ(通称:命のビザ)を携えたユダヤ難民が海を渡って上陸してきたのもここ敦賀港です。詳しく知りたい方は資料館『敦賀ムゼウム』を訪ねてみてください。
このほかにも敦賀港には1905年に石油貯蔵用の倉庫として建設され、2009年に国の登録有形文化財に登録され、現在は商業施設として親しまれている『敦賀赤レンガ倉庫』もあります。先ほどご紹介した『生け簀の甲羅』もこの施設の『レストラン館』にあります。
施設内には敦賀の最盛期(明治後期~昭和初期)の街並みを再現して史実とエンターテインメント性を両立させた鉄道と港のジオラマが楽しめる『ジオラマ館』もあるので、より深く敦賀のことを知ることができるはずです。
・敦賀赤レンガ倉庫
住所:福井県敦賀市金ケ崎町4-1
電話:0770-47-6612
営業時間:店舗により異なる
定休日:水曜(祝日の場合はその翌日)、12/30〜1/2
HP:https://tsuruga-akarenga.jp/
延伸された北陸新幹線に乗って、東京から敦賀まで一直線!
3月に北陸新幹線が延伸されれば、従来乗り換えが必要だった東京―敦賀間は直通になり、従来よりも所要時間が最大50分短縮され、最速3時間8分でアクセスできるようになります。金沢旅や福井旅のついでなど、少し足を伸ばして鉄道と港のまち・敦賀を訪ねてみては?
◎撮影&取材&文/中森りほ
店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。