外国人がおすすめする“まにあっく”なスポットを訪れて、東京の魅力を再発見する企画。今回は中国出身のアーティスト・booさんが通っているという、ちょっと変わった小さな食堂<灯明(とうめい)>について紹介します。
ギャラリーと食堂が共存する
新感覚空間で山形料理に舌鼓
「ギャラリーが併設されているお店で、料理は何を食べても美味しいんです」とbooさんが絶賛する『灯明』。自身もアーティストとして活動する冨樫達彦さんが料理人を務め、山形の実家の料理を基にしたというメニューはどこか懐かしく、ほっとする味わい。骨董市や古道具店で入手したという器への盛りつけまで、どこまでもセンスがいい。
取材時におこなわれていたのは陶芸家・工藤冬里氏による作品展。
ギャラリーと食堂との間に仕切りはなく、カウンターに8席分の椅子が並ぶというなんとも不思議な空間。
山形の地酒も豊富です。
灯明(トウメイ)
Instagram:tohmei_diner
おすすめしてくれたのは…
中国出身
グラフィックデザイナー・booさん
Q.日本に来たきっかけは?
日本の美術大学院に入学するため。どうしても行きたい学部があったんです。教えている先生がアーティストの方で、考え方や作品がすごく魅力的で。日本のアートは、日常の発見とか身近なテーマが多くて、すごく自分に近いな、合っているなという感覚がありました。
日本で仕事をしたいとか、先のことはノープラン。とにかくその学校に入りたいという気持ちでいっぱいでしたね。今はグラフィックデザインの仕事をしながら、個人でアーティスト活動をしています。去年は念願叶って、「TOKYO ART BOOK FAIR」に出展することができました。
Q.週末はどんなことをしていますか?
1日の半分は運動をしています。友人に組んでもらったピストバイクに乗って、近所のジムに行ったり、ボルダリングに行ったり。ボルダリングは石の感じや空間がかわいくて、集中できるから好き。嫌なことも忘れられます。途中で休憩をはさんで、友人とどうでもいい会話をするのが癒しなんです。
Q.ここ『灯明』はどこが好き?
アーティストの方が料理人をやっているお店なんですが、その方のセンスやカウンター席の雰囲気がとにかく良くて、料理も何を食べても美味しい。併設されているギャラリーの展示も、集まってくる人も面白いんですよ。周辺には川くらいしかなくて、あまり便利な場所とは言えないのですが、“わざわざ”行く価値があるところですね。
Q.クリエイティブな活動をされているbooさんですが、インスピレーションを受けたいときはどこに行きますか?
代々木公園にあるドッグラン。ひたすら犬を観察し続けるんです。いろんな犬種が走り回っていて、他の犬と仲良くなっている子もいれば、照れてる子もいたり、誰にも相手にされない子がいたり……愛しいんですよ(笑)。あとは本屋さんに行くとか、自転車屋さんでギアを見るとか。デザインを注意して見ているというよりは、街で目に入ったものを吸収していて、それが無意識にアウトプットされているんだと思います。
Q. booさんにとっての東京の魅力って?
私が思う東京の魅力は、意外とささやかなところかも。東京タワーとかよりも、商店街にある素朴なお店のキッチン道具とか、自転車で走りやすいツルツルの道とか、散歩をしていると急に現れる面白いお店とか、そういうところに感動しますね。
Q. booさんの今後の予定は?
個人のアート制作は続けていきたいです。会社の仕事だけだと、商業的なものしか作れなくなってしまいそうだから。最近の自分の好みや自分の状態を具現化するような作品を、もっと作っていきたいですね。
-Profile-
booさん
Instagram:boovfo
中国・河南省出身。日本に来て7年目。広告などを制作するグラフィックデザイナーとして働きながら、アーティスト活動もしている。都内の移動はもっぱらピストバイク。
<STAFF>
◎撮影/杉山巧剛
mina2024年4月号より
店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。