永く愛され続ける「いいもの」には、それを裏付けるストーリーがあります。今回掘り下げるのは、オーソドックスなデザインで無駄のない上品な佇まいが魅力の<白山眼鏡店のメガネ>です。
どんなシーンにも馴染む、上質で流行に左右されないデザインのメガネ
べっ甲色フレームにゴールドがさりげないアクセント。明るすぎない色味に大人っぽさが漂う。
36,300円(フレームのみ)/白山眼鏡店WALLS
1883年に創業した白山眼鏡店は、1938年に分家を経て、その後東京・上野の地に現本店を開業しました。代表兼デザイナーの白山將視氏は、同社への入社前に2年間イギリスに留学。当時の日本にはなかった靴や傘などの専門店にインスピレーションを受け、流行に沿ったデザインでなくても、オリジナリティや一貫性のあるスタイル提案ができれば、商売として成立するのだという新たな価値観を得て帰国しました。
ほどなくしてつくられたのが、このハンクというオリジナルのモデルです。当時、眼鏡店は国内外から仕入れた眼鏡を販売するのが一般的だったため、自らでデザインをして製造するという前例がありませんでした。
華奢なメタルフレームの眼鏡が主流だったその頃、流行から少し外れた、野暮ったい雰囲気の眼鏡をつくったら面白いのではないかという逆張りの発想で、職人に依頼してわずかな数量をつくることに。すると、雑誌などでも取り上げられ、たちまちハンドメイドでは追い付かないほどヒットしました。
7枚丁番のおかげでフィット感が抜群
フロントとテンプルをつなぐ7枚丁番はファーストモデルから変わらない。
テンプルの裏側に誕生した年を刻印
ハンクがつくられた年である1975の刻印は、ロングセラーモデルにのみ採用される装飾。
デザインしすぎないことをモットーにしている同社の代表モデルらしく、ハンクは無駄のない上品な佇まいが魅力。フレームの厚みやサイズ感など、幾度かのマイナーチェンジを行ってきましたが、現在販売されているものは、初代のものに最も近いと言います。
デザイナーがイギリスで得た、流行に左右されず自分たちが良いと感じるものを永く提案し続ける、という考え方が詰まっています。
白山眼鏡店WALLS
☎03-6434-7007
◎撮影/志田裕也 ◎取材&文/名和里穂
mina2023年6月号より
価格は税込です。店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。