訪れると、必ずと言って良いほど、新たな出会いや発見がある本屋さん。今回は幕張にある本屋lighthouseさんを紹介します。他の店にはない、本屋の成り立ちや選書のこだわりに注目です。
〈発見その1〉小さい小屋からはじまった「光となれる場所」
「lighthouse」とは「灯台」の意味で、「本が“あなた”にとっての光になればいい。そしてそんな光となれる場所」がその由来です。
「本は“ひと”であり、本に描かれている“物語”は、それがフィクションであれノンフィクションであれ、あるいは実用書的なものであれ、“誰かの人生”が詰まっているものであり、それを読むことでひとは光を感じる。だから“これはあなたの光になるかもしれないよ”と提案に気づいてもらえるようにそっと置いておく、そんな存在になりたいから本屋になりました」と店主・関口さん。
その思いを実現すべく、書店で週5のアルバイトをしながら、電気も水道の通っていない2坪の小屋の本屋「台風で屋根が吹き飛ぶ小屋本店」を自力で立ち上げオープンしたそうです。
立派なお店になった今も、店頭には手書きのポップにあったり、募金活動を積極的にしていたりと、優しくあったかい明かりが灯っているのは、小屋時代と変わりません。
〈発見その2〉フェミニズムやNOヘイトの棚が。
店内には関口さんが選んだオールジャンルの本が並びます。中でも特徴的なのは、フェミニズムやNOヘイト関連の棚があるところ。そんな選書、棚づくりになった理由は、関口さんの自身の経験がきっかけなんだとか。
「高校の時のサッカー部での上下関係が激しくて、特に1年生の時に嫌な思いをしたんです。同期とも自分達が2年になった時にチームを変えようと話していました。自分は、進級をする前に怪我が原因で退部をしてしまったのですが、その後仲間達は、下級生にお自分達がされて嫌だったことを繰り返していて。自分が残って変えてやれなかった悔しさが今も頭の片隅にあって、部活動というと小さく感じるかもしれないですけど、そういった理不尽な支配とか暴力に抗いたいと思ったことが、今のこの本屋の選書にも出ているのではないかと思いますね」
本を読むことで、希望という光を感じてほしい。難しく感じてしまう、主張のあるテーマですが、触れたことがない人にもわかりやすい本をセレクトしているのと、手書きのポップを並べて手にとりやすくしている所にも関口さんらしさを感じます。
▶︎フェミニズムやNOヘイト本に触れたことがない人へのおすすめ2選
✔️アルテイシア『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』(幻冬舎)
✔️深沢潮『緑と赤』(小学館文庫)
〈発見その3〉新発見のあるオリジナル雑誌『灯台より』
そして、選書だけでなく、『灯台より』というオリジナル雑誌も刊行。数ヶ月に1号のペースで発行しており、現在は4号目の準備中。文学フリマなどで知り合った「これからきそう!」な書き手の方が、連載をしているエッセイ集です。
「この雑誌が、書き手の方の発掘されるきっかけになればと。そして、その方々が注目されれば、また自分の本屋にいい本が戻ってくるという良い循環が作れるとも考えています」
そう、雑誌『灯台より』も、“光となれる場所”のひとつなんです。ゲストにはあえて、有名な方を迎えているそうで、過去にはクリープハイプの尾崎世界観さんや、カツセマサヒコさんが参加。ここでしか読めないエッセイや対談は必見です。
どんな人にも寄り添ってくれる本屋 lighthouse
さらに、レジ横には子どもが本を買うためのシステム「子ども読書貯金」も。
「小屋でまだ営業していた頃、隣に住んでいた小学生がよく遊びに来ていて、その子たちは駄菓子を買うお金は持っているけれど、本のために使うお金は持っていなくて。欲しい本があるのに、買えないのは残念だと思い始め、この貯金システムを導入しました。10年後、20年後に自分で本を買えるようになった時、また買いに戻って来てくれると嬉しいです」
今だけでなく、ずっと先まで、「人の心に灯を宿し続けたい」という関口さんの温かい想いが詰まった本屋、lighthouse。
ぜひ、灯を求めて、光を探しに。訪ねてみてください。
SHOP INFO
『灯台より』のvol.4が11月23日に発売予定。店頭はもちろん、オンラインでも購入可能です。手に取ってみてはいかがでしょうか。
住所:千葉県千葉市花見川区幕張町5-465-1-106
営業時間:12:00〜19:00
休み:月火、第3水曜日
HP:books-lighthouse.com
▶︎店主・関口竜平さん
大学院での論文をきっかけに本とより深く関わるようになり。「30歳まで本屋さんを出店する」という目標を掲げ、2019年に前身となる「台風で屋根が吹き飛小屋本店」を始める。そして2021年に現在のlighthouseをオープン。