2024.08.29

【BEAMS代表取締役社長 設楽 洋さんインタビュー Vol.2】 「BEAMSが考える“トレンドとベーシック”」

BEAMS代表取締役社長である“たらちゃん”こと設楽 洋さんのロングインタビュー第二弾は、一見相反すると考えがちなトレンドとベーシックについてお話を伺いました。BEAMSが多くのレーベルを持ち支持されている理由はここにあり! Vol.2も読み応えたっぷりです。

 

>Vol.1を読んでいない方はこちらから!

 

 

 

 

“カルチャーやライフスタイルを売る店”が
BEAMSの変わらぬコンセプトです

BEAMSの原点である「American Life Shop BEAMS」を立ち上げた1976年は、ベトナム戦争が終結し、日本では学生運動が落ち着いて数年経ったタイミング。世の中の空気の流れが変わって、明るい雰囲気になっていくのを感じていました。

 

原宿にはデザイナーズブランドが生まれ、ローラー族や竹の子族、ゴスロリなどのさまざまなファッションカルチャーが生まれました。百貨店もパチンコ店もなかった原宿は、当時の若者にとってお店を出しやすいエリアだったんですよ。そうして若いクリエイターたちが集うようになり、僕も長年憧れてきたアメリカのライフスタイルを詰め込んだ店をオープンするに至りました。

 

「American Life Shop BEAMS」は、名前のとおり“アメリカの生活を売る店”がコンセプト。アメリカの大学、UCLAに通う学生の部屋をイメージして、6.5坪の小さなスペースにパイン材のテーブルを置き、ろうそく立てやお香を並べ、ジーンズやスニーカー、ネズミ捕りなどを販売したんです。やっぱり衣服がよく売れ、その比率がどんどんと高くなり、現在のBEAMSへとつながるわけです。

 

会社が当時の何千倍という規模になった今も、やっていることは変わらないんですよね。服だけじゃなく、雑貨やライフスタイルに必要なものを同じ空間の中で提案する、根底にある想いやモノ選びの基準は変わっていませんね。

 

 

 

ファッションの基礎を分かったうえで
自由に着崩す、遊ぶのがBEAMS流

大事にしているコンセプトのひとつに、“BASIC & EXCITING”があります。ベーシックなものこそエキサイティング、つまり基礎を押さえていれば自由なアレンジも楽しめるということ。

 

例えば、授賞式などのかしこまったシチュエーションで、ロックミュージシャンが普段通りのTシャツとデニムにジャケットを合わせるみたいに。ともすればちぐはぐな組み合わせも、TPOやファッションのマナーを分かったうえでのアレンジならば成立するし、その人らしさが際立ってよりかっこよくなることもあると思うんです。

 

アメリカ発祥のスタイルは、ドレス、ミリタリー、ワーク、スポーツと大きく4つに分類することができ、これらの基礎を押さえてそこからどう崩すかがポイントになってきます。

 

BEAMSでは、それらをベースに着崩す“ドレスダウン”や、真逆のテイストを掛け合わる“ワイルドシック”などのスタイルを提案してきました。スポーツウェアやマウンテンパーカを街で着ること、スーツとスニーカーを合わせることも発信し続けた結果、多くの若者に広まって、今ではスタンダードになりましたね。こんなふうに、トレンドを一時的なもので終わらせず、カルチャーとして浸透させるのもBEAMSの役目だと考えています。

 

 

 

トレンドの変化や人々の反応に合わせて
会社の規模はどんどん大きく

僕らが展開するレーベルは、事業計画ありきではなく自然な流れでできたものばかり。

 

「American Life Shop BEAMS」を始めて2年くらい経った頃にプレッピースタイルが流行し、トレンドがアメリカの西海岸から東海岸に移ったのを感じて「BEAMS F」を立ち上げました。そのあと、プレッピーのルーツはヨーロッパにあるぞということで、「International Gallery BEAMS」ができ、その後ウィメンズカジュアルの「Ray BEAMS」を始めました。一方で従来のメンズカジュアルの持つベーシックさやヘビーデューティーというテイストが好きな女性のお客さんもいる。そこに応えようとすると、どうしても既存のメンズ服ではサイズが合わず、「BEAMS BOY」をスタートさせました。

 

今では多くのレーベルがありますが、すべてに共通してBEAMSらしさ=僕が青春時代に憧れてきたアメリカっぽさが感じられる。最初に影響を受けた地域の文化や初めて聴いた音楽など、思春期にハマったものはいつまでも残るんですよね。その時代ならではのトレンドを知り、体感しておくことがすごく大事なのだとあらためて実感します。

 

海外のブランドとも何度もコラボを実現してきました。日本人の体型に合わせて別注でリサイズさせてもらうところから始まり、信頼関係を築いていくうちに生地選びやデザインにも関わらせてもらえるように。BEAMSがデザインをした「Levi’s®」のデニムが世界で発売されたり、デザイナーのラルフ・ローレン氏に”「BEAMS PLUS」が大好きだ”と言って頂けたり。強く憧れたブランドや人に認めてもらえた時は、ものすごい嬉しかったです。ナイキのスニーカーを解体し製作して頂いたわんちゃんのオブジェは世界にひとつ。いまだに社長室に飾ってあります。

 

 

 

移り変わりの早い原宿にオフィスを構え、
インスピレーションを得る

トレンドが生まれては消え、また生まれるという繰り返しを近くで感じられるのが原宿の好きなところ。ファッションに限らず、日々新しいお店ができては、景色が変わっていきます。表参道にはスーパーブランドが軒を連ね、竹下通りにはキャッチーなトレンドに出合える店があり、明治通りにはファストファッション、裏原宿にはセレクトショップが集まっている、そんな混沌としたバランスも面白いと思っています。

 

街から漂う空気や新しいトレンドを社員たちにも体感してもらい、仕事のインスピレーションを得てほしくて、原宿にオフィスを構えているんです。

 

社長室を入って最初に目に入る棚は、BEAMSそのものを表していると思っていて。頂きものやお気に入りを飾っていくうちに、30年~70年代の古道具から、お茶目でキッチュなアート作品まで幅広いラインナップになりました。職人の技が光るこだわりのものとその時代の徒花的なもの、両極端なものがひとつの空間にある感じがとても好きで、原宿っぽくもありBEAMSらしいなと感じていて、見るたびに原点を思い出させてくれるんです。

 

 

 

「こうきたか」という新提案のためにも
ミーハー心を忘れずに多様な人と交流する

周囲から“たらちゃんは3人いる”と言われるほど(笑)、日々色々なところへ出向いて、多くの人とコミュニケーションを取っています。

 

昔は同業者とばかり集まっていましたが、最近は全く異なる業種や世代の人と会うことがほとんど。IT業界にはIT業界のトレンドがあり、音楽業界には音楽業界のトレンドがあり、ギャルにはギャルのトレンドがある。多方面に興味を持ち、そのなかで流行っているモノ・コトを幅広く知ることが大事だと思いますね。

 

ファッションだけに関心が偏ると、どこのブランドもきっと同じになってしまいますよね。色々な人の話を聞くのは楽しいし、この世界は面白いとあらためて感じられます。狭い世界にとどまらず、あらゆる人や街にアクセスして多様な考えに触れることで、BEAMSとしても「こうきたか」という新たな発信ができるだろうと信じています。

 

今一番関心があるのは、エンターテインメントやスポーツなどdoの要素があるもの。ファッション好きが集まるBEAMSというコミュニティに、フェスやキャンプやサーフィンなどのわくわくできるdoの要素を掛け合わせて、もっと楽しい集団へと進化させられたらなと考えていますね。

 

 

PROFILE
設楽 洋

1951年 東京都出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、75年に株式会社電通に入社。アメリカのライフスタイルに憧れ、影響を受けた青春時代が原動力となり、BEAMSの創業に参画。76年にBEAMSの原点であるAmerican Life Shop BEAMSを原宿に出店。83年に電通を退社し、88年に株式会社ビームスの代表取締役に。あだ名はたらちゃん。

設楽 洋 Instagram
@taracyan3

 

BEAMS公式HP
https://www.beams.co.jp/

 

◎Photo / wacci ◎Text / Nawa Riho

 

mina10号は好評発売中! こちらのリンクからチェック🔗

記事に掲載されている情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。

MAGAZINE

mina 2024年12・1月合併号

COVER STORY

 STORY of WEEKEND
HANDSOME JACKET 奈緒 秋の終わりから、メンズジャケットを羽織って。

  • ◆この秋冬は「ジャケット」さえあれば。
  • ◆カジュアル好きのふたりが着たい「週末テーラード」
gototop