たくさんの本を読んできた本好きのみなさんに、
「あなたが繰り返し読んだ本、教えてください」と聞いてみました。
「mina読者におすすめするなら……」と絞り出してくれたおすすめ本で、読書にふける週末はいかが?
キアズマ珈琲 店主 高安宏昌さんおすすめ『密猟者たち』
『密猟者たち』
トム・フランンクリン著/伏見威蕃訳/創元コンテンポラリ
作者の故郷を舞台にした小説短編集
はじめて読んだのは15年くらい前。次に読む本に迷ったら、手に取ることが多いです。作者の生まれ育ったアメリカ南部、それも深南部の情景が色濃く描かれた一冊で、表題作の『密猟者たち』や『グリッド』もおもしろいですが、僕は特に序文の『ハンティング・シーズン』が大好き。とにかく文章がかっこいいんですよね。僕もそうでしたが、アメリカ南部と言われてもイメージが湧かない方にこそ読んでもらいたい。(高安さん)
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キアズマ珈琲 店主/高安宏昌さん
豊島区雑司が谷にある鬼子母神堂の参道に店を構える喫茶店、キアズマ 珈琲では、店主の高安さんが好きなSF小説を中心にさまざまな小説を本棚に並べ、利用客に開放している。
詩人 文月悠光さんおすすめ『新解さんの謎』
『新解さんの謎』
赤瀬川原平著/文春文庫
新解さんとは何者なのか? 言葉に踏み込むエッセイ
本書は辞書をめぐるエッセイ集。赤瀬川原平の文章を読むと、そのユーモアに自然と笑いが込み上げ、心が軽くなるんです。抱腹絶倒。同時に、こんなにも真面目で純粋な視点があったのかと感心します。文庫版には『紙がみの消息』というエッセイも併録されていて、紙の本や紙幣の行く末を考察しています。元になった連載は1990年代前半に書かれたものですが、スマホや電子書籍、電子マネーの到来を予告するかのような部分が随所にあり、著者の鋭い目に驚かされます。(文月さん)
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詩人/文月悠光さん
本誌巻頭にて連載中。高校3年のときに『適切な世界の適切ならざる私』(ちくま文庫)で中原中也賞を最年少受賞。詩集『パラレルワールドのようなもの』(思潮社)が発売中。
EYEVAN PR 荒川奈緒さんおすすめ『プラネタリウムのふたご』
『プラネタリウムのふたご』
いしいしんじ著/講談社文庫
優しさに溢れた、楽しくも悲しい長編小説
15年くらい前に、古本屋で思わずジャケ買いした一冊。主人公は、優しい言葉を持った大人たちに育てられた双子の兄弟。成長した双子が周りをそれぞれの優しさで包み込んでいく……そんなお話です。プラネタリウムとサーカスがモチーフになっているファンタジックな世界にわくわくしてしまうんですよね。その世界に戻りたくなり、定期的に読み返しています。すべての大人に一度は読んでもらいたいおとぎ話です。(荒川さん)
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EYEVAN PR/荒川奈緒さん
年間に100冊読むほどの本好き。最近読んでいる本は、伊集院静著『ミチクサ先生』(講談)。
クリープハイプ 尾崎世界観さんおすすめ『夜間飛行』
『夜間飛行』
野村佐紀子著/リトル・モア
超小型カメラが写す繊細な風景写真集
10年以上前、当時通っていた書店のアート関連のコーナーで見つけた本。小型のスパイカメラで撮影された独特の質感の写真が載っていて、そこに写っているものよりも、そこに写されなかったもののほうが伝わってくる。何も写っていないはずの暗闇の写真から感じる匂いや存在。どの写真も強く想像が掻き立てられ、本を開くたびに緊張してしまう。誰にでも気軽にすすめられるものではないけれど、だからこそこの本をすすめたくなった人はある程度仲よくなれたんだと実感します。(尾崎さん)
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クリープハイプ/尾崎世界観さん
2001年結成のロックバンド、クリープハイプのヴォーカル兼ギター。作詞作曲も担当。その傍らで、作家活動もおこなう。2020年には「母影」(新潮社)で芥川賞候補となる。
mina2024年8・9月合併号より