オーナーのこだわりの詰まった、東京のカルチャーショップにクローズアップ。今回は代官山にある、約3,000冊もの多彩なジャンルの古書が揃う『東塔堂 Totodo』をご紹介します。
「好き」や「興味」が浮き彫りになる古書
店内にはギャラリースペースを併設。写真や絵画など幅広い展示を開催。
渋谷と代官山の間、閑静な路地に店を構える古書店『東塔堂』。美術、写真、デザイン、建築といった専門的なジャンルの古本が約3,000冊揃っています。
学生時代から読書に親しんでいたオーナーの大和田さんは、特に写真が好きで、写真集をよく眺めていたそう。そして、自身が通っていた写真集や美術書を専門とする古書店が求人を募集していたことを機に、古書店の仕事に携わるようになりました。
「古書店で働くうちに、例えば一冊の写真集には、写真家だけではなく本のデザインをする人、編集をする人など、たくさんの人が関わっていることを知りました。そうした“本を通したつながり”を知っていくうちに、自分の興味が広がっていきました」と大和田さん。古書店で知った本の新たな魅力が、自身で店を開くきっかけになったと言います。
(左)大和田さんのお気に入りは、多彩に表現された紙の作品が集まる写真集『紙のフォルム』。(右)浮世絵『名所江戸百景』で描かれた魚を現代に持ち込んだユニークな写真集『TOKYO FISHGRAPHS ¦ 2020』。
『東塔堂』に並ぶ本は、写真、デザイン、建築など、一見するとバラバラに思えるジャンルです。どうしてこれらのジャンルなのかを尋ねてみると「共通していないように思えますが、写真家の人は建築の写真を撮る人が多かったり、本をつくるときにはブックデザイナーが必要だったりと、実はつながりがあるジャンルを選んでいるんです」。
そのため、ひとつのジャンルに興味があって来店した人でも、ジャンルを横断して興味が広がりやすい品揃えを意識しているそう。
本棚はジャンルごとにまとめて陳列されているため、興味のある本を自然と手に取れる。
専門的な本は“難しそう”と感じてしまいがちですが、大和田さんは「最初は知識がなくても、たくさんの本を見ていくうちに自分の好きなものがわかってくる」と話します。
「気に入った本を見返すと、実は編集やレイアウトに同じ人が関わっていたとか、あとから気づくことがあります。今でいう“タグ付け”のような、自分の好きという感覚を裏付けする作業が面白いんす」。同店の本からあなたの“好き”の答え合わせができるかも?
『東塔堂 Totodo』
住:東京都渋谷区鶯谷町5-7 第2ヴィラ青山1F
営:13:00〜18:00
休:日曜
HP :totodo.jp
Instagram:totodo_books
◎撮影&取材&文/稲垣恵美
mina2023年6月号より
店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。