オーナーのこだわりの詰まった、東京のカルチャーショップにクローズアップ。今回は北千住にある、演劇の概念が変わる自由な小劇場『BUoY(ブイ)』を紹介します。
小劇場で体験する〝非日常の極み〟
地下の小劇場は、元銭湯という特殊なスペースがアーティストの創造性を刺激する。
2017年、東京の北千住エリアで20年以上眠っていた廃墟が、演劇やアート展示を開催する複合的なアートセンターとしてよみがえりました。立ち上げの中心になったのは芸術監督の岸本佳子さん。
現在、2階の元ボーリング場をアートギャラリー、銭湯だった地下空間を〝舞台や客席のない小劇場〟として企画・経営を手掛けています。イメージしたのは、海外で目の当たりにした演劇のあり方でした。
「海外の演劇を観るなかで、東京では舞台や座席の位置が決まっている劇場が多く、空間をフレキシブルに使える劇場が少ないと感じていました。例えばニューヨークでは、その辺にある倉庫を誰かが改造して演劇スペースにするなんてことも珍しくありません。東京にもそんな場所があったら面白いんじゃないかと思って」。
2階のアートスペースは週一回のペースで展示が変わり、空間を活かした作品が並ぶ。
岸本さんが思い描いた通り、『BUoY』はアーティストの使い方によって空間が多種多様に変化し、日々斬新な演出が生まれています。
「日本でイメージされる演劇は、台本があって、役者さんが演じるものですが、海外の演劇の概念はもっと幅広い。いきなりおじいちゃんのアーティストが舞台に出てきたかと思えば、泥で作られた床と壁をちぎったり投げたりしているうちに、最終的にすごい作品が完成しているとか。衝撃的な出会いがたくさんありました」。
2階の元ボーリング場は、廃墟の雰囲気を残したカフェ兼アートスペースに。カフェのグリーンやドライフラワーは岸本さんが空間に合わせてセレクト。
そんな岸本さんが考える演劇の楽しみ方とは? 「日常とか自分の常識からすごく外れたものを見ると、リフレッシュされて、心のメンテナンスになると思うんです。もしかしたら、人生が変わる体験につながるかもしれない。ふらっと気軽に〝非日常の極み〟を体験できるのが小劇場の魅力だと感じています。今、日本で演劇はマイノリティな文化ですが、もっとみなさんが楽しめるように根付いたらいいなと思います」。
演劇を一度フラットな目線で捉えてみると、新しい楽しみ方が見えてくるのかもしれません。
『BUoY』
住:東京都足立区千住仲町49-11 2F(墨堤通り側入口)
営:公式Twitterよりイベントスケジュールをご確認ください。
カフェ&バー/木〜金曜 14:00〜19:00、土日祝 13:00〜18:00
HP:buoy.or.jp
Instagram:buoy_tokyo
Twitter:buoy_tokyo
◎撮影&取材&文/稲垣恵美
mina2023年7月号より
店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。