映画コラムニストの新谷里映さんが厳選した、mina女子におすすめの作品を紹介します。
記憶にある思い出と記録された映像の違いを考えさせられる
スマホが当たり前になったように、AIロボットも当たり前の世界だったら……。『アフター・ヤン』は、アートハウス向けの良作で映画賞レースを活気づけてきた気鋭の製作・配給会社A24によるSF映画です。
過去にこのコーナーで紹介した『レディ・バード』『WAVES/ウェイブス』『ミッドサマー』もA24の映画でした。何が言いたいかというと、中には少々尖った映画もありますが、A24=面白さが確約と言っても大袈裟ではないんですね。
今回の『アフター・ヤン』はSFですが、私たちの生活と地続きの世界が描かれるヒューマン・ドラマでもあります。タイトルにある”ヤン”とは、”テクノ”と呼ばれる人型ロボットのこと。ヤンは、茶葉の販売店を営むジェイク(コリン・ファレル)と妻のカイラ、中国系の養女ミカと暮らしています。ミカにとってはベビーシッターであり兄のような存在でもありました。
けれどある日、突然の故障で動かなくなってしまいます。新しいロボットに交換するのではなく、できることなら修理をしたいと模索するなかで、ヤンのメモリには、彼の秘密、彼の過去、彼の真実が記録されていることが分かり……。
これまでにも人間そっくりのAIが登場する映画はありましたが、今回は見た目の境目がなくなることで、人とAIの違いは何なのか、人間の記憶と機械的な記録との違いはあるのか、深く考えさせられるのです。
TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中
出演:コリン・ファレル、ジョディ・ターナー=スミス、ジャスティン・H・ミン、マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ、ヘイリー・ルー・リチャードソン
配給:キノフィルムズ
©︎2021 Future Autumn LLC. All rights reserved.
▶︎案内人は……
新谷里映さん
映画ライター・コラムニスト。音声プラットフォームVoicyにて『シネマのなかに見えるもの』配信中。
Twitter @rieshintani
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