はじめまして。東京・高円寺にある韓国雑貨店『雑貨屋PKP』の店主です。この連載では、私が韓国に行き来する間に出会った作家さんや、10数年間通う中で見てきた韓国のクリエイティブ事情をお話したいと思います。第1回は、私が韓国雑貨をよりすきになるきっかけとなった、韓国のショップ『NEONMOON(ネオンムーン)』のお話です。
『NEONMOON』との出会い
2010年頃、友人から何気なく貰ったマスクシートをきっかけに韓国コスメにハマって以来、年に3~4回は韓国に行き、2014年には約2ヶ月ほどの短期留学をしました。留学中のある日、日本のクリエイター・ステレオテニスさんのTwitterに「韓国の友達からもらったもの」として『NEONMOON』のオーナーからプレゼントされたポーチが載っていました。
そのポーチがとても可愛かったので『NEONMOON』で検索すると、学校から徒歩数分のヨンナムドンという街にあるとのこと。そしてInstagramを見てみると、お月様のロゴマークのネオン管やピンクの壁、カラフルなヴィンテージのアメリカントイ、オリジナルのトートバッグのレトロなデザイン、そしてオーナーカップルのファッションや日常の様子が次々と目に飛び込んできました。
90年代のファッション誌『Olive』や『CUTiE』で育ち、中野ブロードウェイが大好きな私は「私の好きな“かわいい”と同じ“かわいい”を共有できる人が韓国にもいるんだ!」とうれしくなり、さっそく翌日お店へ向かいました。
いざ『NEONMOON』へ。
『NEONMOON』は、2014年にオープンした70~80年代のアメリカンレトロをベースにオリジナルアイテムを展開するレトロライフスタイルショップです。2007年から2015年まで発行された韓国のファッション紙『CRACKER YOUR WARDROBE』のデザイナーだったソソちゃんと、その雑誌でよくインタビューされていたヨンジュくんのカップルが始めたお店です。
地図を見ながらたどり着いた『NEONMOON』のドアを開けると、Instagramで見たソソちゃんとヨンジュくんが店内にいて「わぁ、本物だ!」と、とてもドキドキしたことを覚えています。
しばらくすると、日本にも住んでいたことがあるヨンジュくんが「もしかして日本の方ですか?」と日本語で話しかけてくれました。そして、自分たちもよく日本に行くこと、高円寺や下北沢の古着屋やおもちゃ屋が好きなこと、まだ日本人のお客さんはほとんど来ないのでとても珍しいことなど、いろいろなことをおしゃべりしました。
今やヨンナムドンはおしゃれなカフェや雑貨店が立ち並ぶ定番のデートスポットになっていますが、この街がこんなにも賑わうきっかけになったのは、間違いなく2014年に『NEON MOON』がオープンしたことがきっかけだと思います。
『NEONMOON』の躍進
オープンから2年ほど経った2016年以降、『NEONMOON』はオリジナルのアパレルや雑貨を次々と発売する様になりました。同じ年の3月には日本で初のポップアップをラフォーレ原宿で行い、大成功に終わります。その3ヵ月後には渋谷のパルコで2回目のポップアップを開催し、日本でもどんどん知名度が上がって行きました。
2017年の始めには、ホンデに2店舗目となる『NEONMOON NIGHT』をオープン。こちらの店舗はビンテージ品の取り扱いは無く、ふたりのデザインしたオリジナル商品のみを扱う店舗でした。この頃発売した、人気アイドル『EXO』とのコラボ商品は一瞬で完売した“幻の商品”になり、今でも持っている人に出会った事がないほどのレア商品となりました。
2020年にはコスメブランド『rom&nd』とのコラボ商品を発売。想像を絶するかわいさとアイテムの多さ、カラーの名前やノベルティに至るまで抜かりなく広がる『NEONMOON』の世界観から、ソソちゃんのNEONMOONに対するプライドや自信がひしひしと伝わり、届いたコスメを手に取った瞬間、涙が出てくるほど感動してしまいました。
突然のクローズ発表と『シーズン2』のスタート
韓国でも日本でもメジャーな存在となった『NEONMOON』ですが、2021年の4月、Instagramでヨンナムドンの店舗をクローズすることが突然お知らせされました。
そこには、お店が7周年を迎え、20代から30代になったふたりがこれからもNEONMOON を続けて行く為にと悩んだ末『シーズン2』を準備すると決めた事、スタート地点であるヨンナムドンの店舗をクローズし、多くの人たちの思い出が込められた空間をまた別の思い出として埋められるように、さらに楽しい空間として再スタートさせること。
ヨンナムドンの店舗を準備していた7年前の今頃より、多くの悩みと愛情を持ち、着実にその思いを埋めて行きます、という文章が綴られていました。
そして2022年、4月。ふたりの新しい挑戦『The NEONMOON』がソンスに誕生しました。
『The NEONMOON』は、ふたりの原点であるヨンナムドンの『NEONMOON』とヨンジュくんが運営していた飲食店『40キッチン』がひとつになり、アメリカンヴィンテージが並ぶギフトショップとスナックバーが隣接した、新しいかたちの店舗となりました。
お店の左側にはソソちゃんのミシンや作業スペースがあり、右側にはスイーツが並ぶショーケースやヨンジュくんが腕を振るうキッチンがあります。
なにより驚いたのは、約3ヵ月という期間で、店舗の解体から床の張り替え、塗装、電気工事、商品棚の製作に至るまで、ほぼふたりだけでお店を完成させたことです。
シーズン2である『The NEONMOON』は、ふたりが「これからも自分たちらしく末永くお店を続けていけるように」という思いが具現化された、よりふたりらしい空間となっていました。
ふたりのセンスやアイディアは、いつまで経ってもずっと私の憧れです。『雑貨屋PKP』もオープンして3年が過ぎました。これからも自分が好きなものや好きなことをどんどん体現して、いつか『NEONMOON』のように『そこにあるだけで街全体の雰囲気まで変えてしまうような唯一無二の個性を持ったお店になれたら』と思います。
【店舗情報】
韓国セレクト雑貨「雑貨屋PKP(ピーケーピー)」
住:東京都杉並区高円寺南4-34-10 グランドコート三上101
営:15:00~20:00
休:水曜
Instagram: zakka_pkp
◎構成/稲垣恵美
価格は税込です。店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。