映画コラムニストの新谷里映さんが厳選した、mina女子におすすめの作品を紹介します。
こんなにもシンプルで深い、愛と喪失の描き方があったなんて!
どんなに愛していてもいつか別れは訪れます。突然の別れかもしれないし、「さよなら」を伝える時間のある別れかもしれない。どちらにしても永遠の別れは、残された者に大きな喪失をもたらします。フランス映画『秘密の森の、その向こう』にも喪失が描かれていますが、その喪失を癒す出会いも描かれていて。
主人公は8歳のネリー。大好きなおばあちゃんが亡くなり、思い出の品を整理するために、ネリーは母親と一緒に、森のなかにあるおばあちゃんの家に向かうのですが、そこでネリーはとても不思議な経験をするのです。
それは、ネリーと同じ歳で、ネリーの母親と同じ名前のマリオンという少女との出会いでした。マリオンに誘われて彼女の家に行くと、目の前に現れたのは、なんと”おばあちゃんの家”! でも、昔の家でした。そう、森のその向こう側にあったのは、過去の世界だったのです 。
監督のセリーヌ・シアマは「子供時代の親と出会うという設定は、多くの人が自分自身に置き換えて 想像することができるし、親子の関係を見直すことにもなる」と語っています。
何が凄いかって、森を通り抜けるというとてもシンプルな方法で時空を超える説明をし、8歳の少女たちの数日間を淡々と、でもドラマチックに映し出していること。娘・母・祖母、三世代のつながりに、どうしたって感動さ せられてしまう名作です!
ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開中
出演:ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、マルゴ・アバスカル
©2021 Lilies Films/France 3 Cinéma 配給:ギャガ
▶︎案内人は……
新谷里映さん
映画ライター・コラムニスト。音声プラットフォームVoicyにて『シネマのなかに見えるもの』配信中。
Twitter @rieshintani
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