訪れると、必ずと言って良いほど、新たな出会いや発見がある本屋さん。今回は東京、吉祥寺にある〈百年〉を紹介します。他の店にはない、お客さんとの対話の仕方やお店のこだわりに注目です。
〈発見1〉ひっそりとある小洒落た古本屋
中央線吉祥寺駅から徒歩7分、東急百貨店のすぐ横のアパレルショップの2階にあるのが古本屋〈百年〉。すぐ脇にある階段を登っていくと、小さな看板が。
店内に入ってみると、従来の古本屋さんのような薄暗い空間ではなく、明るくおしゃれな店が広がっています。「昔ながらの“古本屋”に入りづらさを感じている女性のお客様も、足を運びんでいただきやすいように心がけました」と店主の樽本さん。
「古本は、幽霊みたいな存在で、本棚にあっても読まれていないと死んでいるも同然に感じます。本はたくさんの人々の目に触れてこそだと思うので、男女問わず古本に触れるきっかけがこの店であればと思います」
2006年にオープンして以来、その姿勢は変わらず。現在では老若男女のお客さん層に愛されるお店になっています。ここちよいBGMも相まって、ついつい長居したくなる、そんな空間。
〈発見2〉“コミュニケーションする本屋”がテーマ
(右は準備中の本)
お店のコンセプトは「コミュニケーションする本屋」。お客さんとのやり取りの中で、金銭面で誠実にいたいというこだわりがあるのだとか。
「お客さんと話すだけでなく、本の売買においてのコミュニケーションを特に大切にしています。対象である本の正しい価値を通じて、並べる棚の位置や値付けなどを誠実に行い、お客様に売っていただいた本をもとに構成しています」
「あえて選書をしない棚づくり」が特徴のひとつ。そしてそれが〈百年〉が、一番大切にしているコミュニケーションなんです。
〈発見3〉新しい本と出会うために
一方で作者とのコミュニケーションも大切にしていて、店内では著者を招いたトークイベントなどのイベントも実施。その目的は「著者や本と、お客様の交流の場」をつくることなんです。
「新刊書の消費時間ってとても短いんです。著者や本との交流の場がここで生まれることで、新刊の時期を超えた本でもお客様にとって新しい本として出会ってもらえるのではないか、という理由で始めました」
瞬間瞬間での消費ではなく、その一冊にたくさんの人に出会って欲しいという想いから生まれたイベント。〈百年〉にあるのは、古本だけではなく「新しい出会い」だということが実感できます。
(現在はリアルイベントではなく、絵や製作物の展示などを店で行っているそうです。)
あなたにとっての“新しい本”を見つけに古本屋〈百年〉へ
10年経っても新しい本がある。“新しい”というのは、“新発売”ということだけではない。新たな持ち主にとっての“新しい”があるということを教えてくれた、古本屋〈百年〉。
「新しい」本に出会うために、ぜひ。
SHOP INFO
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-2-10 村田ビル2F
営業時間:12:00~19:00
定休日: 火曜
HP:100hyakunen.com
▶︎店主・樽本樹廣さん
大学卒業後、好きな本に関わる仕事を、と新刊書店で5年間にわたり勤務。その後、30歳を目前した2006年に古本屋〈百年〉を開業し現在に至る。