主演映画『決戦は日曜日』で議員秘書役に挑み、「議員と後援会の板挟みになったり、縁の下の力持ちの苦労を感じました。自分だったらすすんでは絶対にやりたくない職業」と笑う窪田正孝さん。議員秘書の谷村 勉という人物を演じる上で参考にしたのは身近にいる人たちだった。
窪田:イメージを描きやすかったのはマネージャーさん。すごく動けるマネージャーさんっていますから(笑)。何も言わなくてもスッと水を手渡し、サラッと上手にプロデューサーさんと引き合わせたり。そういう方たちを役作りのヒントにしました。
――本作は秘書の視点で選挙戦を切り取ったポリティカルコメディ。政治の時事ネタパロディも散りばめ、政界のリアリティと虚構を絶妙な塩梅で描く。
窪田:坂下(雄一郎)監督が5年もかけて作られた脚本には、皮肉と毒がいっぱいで(笑)。実はゆがんだ世界って、世の中に溢れてると思うんです。それぞれの業界の門構えはキレイに見せているけど、実際に裏というものはある。だから、こういう世界もあるんだろうなと思いながら演じていました。僕は政治には全く詳しくないですが、この作品が違う視点で政治を見るきっかけになればいいな、なんてことも感じました。
――谷村を振り回す、政界に無知なご令嬢二世議員候補の川島有美を演じた宮沢りえさんとは初共演。「有美役がりえさんじゃなかったら、あんな谷村の表情は作れなかったと思います」と、熱量の高い撮影の日々を振り返る。
窪田:りえさんはとてもエネルギー値が高い方で、大先輩ですけど、かわいらしくて。どれも印象深いですが、屋上で有美が叫ぶシーンは楽しかったですね。熱い有美と冷静な秘書たちの温度差が面白くて。あと、ラストシーンの撮影終了後、りえさんが泣かれていて。その涙もとても印象的で、ご一緒できて本当に良かったなと思いました。
――事なかれ主義だった谷村が、有美と行動を共にすることで変化していく様も本作の見どころのひとつだが、窪田さん自身も「ここ2年ぐらい、結婚を機に仕事への向き合い方や人生のポリシーが変わった」と明かす。
窪田:今までは自分には役者しかないと自身を追い込み、追い詰めることで何か出てくるんじゃないかと無意識に思っていました。もちろん役者は続けたい仕事ですが、もっと違うことにも挑戦したり、プライベートも充実させたいなって。ボクシングもやりたいし、サウナ小屋も作りたい(笑)。しかも、経験したことは全て役者業に生かせるし、繋がってくる。それはこの仕事の特権だと思いますね。
PROFILE
くぼた・まさたか●1988年8月6日生まれ。神奈川県出身。2006年、俳優デビュー。近年の主演作は映画『初恋』、ドラマ『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』など。公開待機作に映画『ある男』がある。
INFORMATION
『決戦は日曜日』
地方都市で強い地盤を持つ衆議院議員の川島が病に倒れ、娘の有美を後継候補として擁立。議員秘書の谷村は、世間知らずだが熱意はある有美の補佐につくことになるが、政界に蔓延る慣習に納得できない有美はある行動を起こす。
1月7日(金)全国公開
出演:窪田正孝、宮沢りえ、赤楚衛二、内田慈、小市慢太郎、音尾琢真
配給:クロックワークス C2021「決戦は日曜日」製作委員会
◎撮影/角田 航 ◎スタイリング/菊池陽之介 ◎ヘア&メイク/糟谷美紀 ◎取材&文/関川直子
2022年mina2月号より