映画『私はいったい、何と闘っているのか』で主演を務める安田 顕さん。本作でメガホンをとった李 闘士男監督とは、主演映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』以来、2度目のタッグで、気心知れた間柄。クランクイン前には、安田さんが演じた愛すべき中年男の伊澤春男像について、ふたりで意見交換されたそう。
安田:僕が『春男はすごくいい人で、ある意味、スーパーマンですよね』と話したら、李さんは『スーパーマンではなく、どこにでもいる普通の人ですよ』とおっしゃられて。春男のように見た目いい人であろうとする人間はたくさんいるけど、腹の中では全く逆のことを考えてるでしょ。そう言う人は世の中に溢れてる、と。それを聞き、たしかに! と納得しましたね。
――一見平凡で人畜無害に見える春男だが、その脳内では日々妄想が炸裂。見栄、虚勢、嫉妬、カラ元気といった感情が忙しなく渦巻いている。
安田:春男とは近しいところも感じます。僕も春男のように脳内でグルグルしちゃってますから。ひとつ前の取材でも映画についていろいろとお話してきたんですが、『伝わってる? 大丈夫かなぁ?』と、ここに来るエレベーターの中でひとりブツブツ言ってましたもん(笑)。昨日の撮影でもシーンを撮り終えたあと、『どうだったかなぁ』と考えながら歩いていたら、全然楽屋に辿り着かず。グルグル考えてしまう性質は似ていますね。
――仕事や家族のために七転八倒しながら毎日を闘い続ける春男。そんな不器用男の日常を切り取った本作は、クスっと笑えて、時にほろり。前評判が高いことに対して安田さんは「逆にそれがちょっと怖くて」と話す。
安田:不安になるぐらい評判がいいのは有難いことですが、気軽に観てほしいから、あまりハードルが上がってほしくないなと思うんですよね(笑)。
――ハードルを上げずに映画の魅力を伝えるなら? の問いには「そこ困ってるんですよねー」と苦笑い。
安田:(『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』のような)“家に帰ったら榮倉奈々さんがワニに食べられて死んでます”的なキャッチーな宣伝文句があればいいんですけどね(笑)。ただ、この映画を観ると、とても心が温かくなるし、笑えるし。隣の芝生が青く見えたり、自分は自分と思っていても他人を羨んでしまうことは誰しもあると思うんです。でも今作は、些細なところに幸せは転がっているよ、あなたはあなたの生き方でいいんだよと、改めて気付かせてくれる気がする。皆さんはいったい何を感じるのか、映画館で確認してもらえたらうれしいです。
PROFILE
やすだ・けん●1973年12月8日生まれ。北海道出身。演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。現在、ドラマ『らせんの迷宮~DNA 科学捜査~』(テレビ東京・金曜夜8時~)に出演中。公開待機作に映画『ハザードランプ』『とんび』など多数。
INFORMATION
『私はいったい、何と闘っているのか』
12月17日(金)全国ロードショー
出演:安田 顕、小池栄子、岡田結実、ファーストサマーウイカ、SWAY(劇団EXILE)、金子大地ほか
配給:日活・東京テアトル
©2021 つぶやきシロー・ホリプロ・小学館/闘う製作委員会
ジャケット 341,000円/イザイア(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン) パンツ 31, 900円/ベルウィッチ(アマンオンラインストア) その他/スタイリスト私物
SHOP LIST
イザイア ナポリ 東京ミッドタウン ☎︎03-6447-0624
アマンオンラインストア ☎︎03-6418-6056
◎撮影/田形千紘 ◎スタイリング/村留利弘(Yolken) ◎ヘア&メイク/西岡達也(Leinwand) ◎取材&文/関川直子