人生の約1/3を占めるという睡眠は、私たちにとってとても大切です。ところが、睡眠の量そのものが少なく、質も低下している人は少なくないのかもしれません。睡眠不足によってイライラする、太りやすい、クマがくっきりして年齢よりも老けて見えるなど、心身ともに支障が現れてしまうことも……。今日を元気に過ごすため、そしてもっと自分を好きになれるように、睡眠について学び直しましょう。
▶︎教えてくれたのは…
睡眠研究家
西川ユカコさん
昭和西川株式会社 代表取締役副社長/睡眠改善インストラクター/温泉入浴指導員/セロトニントレーナー。女性誌の編集者を経て、現職に。著書に『最強の睡眠』(SBクリエイティブ)など。
01. 7~9時間の睡眠で理想の自分に近づく!
「日本人で5時間未満の平均睡眠時間で健康でいられる人の割合は200人に1人ぐらい。つまり意外と少ないのです。一般の人は7~9時間が理想の睡眠時間。きちんと寝る人は機嫌もいいですし、自分が持っている能力を最大限に出しやすい状況に。一番好きな自分になれるというメンタルマネジメントができるのも睡眠のメリットです」(西川さん)。優先すべきは、趣味より睡眠なんです!
02.睡眠不足は、1週間かけてゆっくり帳尻を合わせて
睡眠不足でやる気がでない、ケアレスミスも多い……。「脳の前側の部分"前頭葉"の働きが鈍っているサインかも。例えば1日2時間の睡眠不足を2週間続けると"弱度酩酊状態"といって、ほろ酔いのときの血中アルコール濃度と同じ脳の働きになります。それでは仕事のパフォーマンスも低下しがち。食欲ホルモンのグレリンも増えて太りやすくなります。夜遅くまで過ごす日があることは仕方ないですが、翌日からはいつもよりも30分早く寝るなどして睡眠負債は1週間単位で帳尻合わせをしましょう」(西川さん)。
03.朝寝坊で時差ボケ状態に! 休日も起床時間はいつも通りに
週末はついつい朝寝坊しがち。「午前中の寝すぎはよくないんです。いつもよりも2時間以上起きる時間がずれると、だるくなったり、頭痛がしたり、いわゆる海外旅行に行ったときのような時差ボケ状態に陥ります。疲れている日は早く寝て起床時間は変えないのが、体調をくずさず睡眠時間を補う秘訣。昼寝をする場合は約20分、15時までにしないと夜の睡眠の質が下がります。ちなみに日中に眠気がない=質のいい睡眠をとれているということです」(西川さん)。
04.1日の光を意識して、体内時計を調整しよう
睡眠は量とともに質も大事で、カギを握るのが光。「私たちの祖先のように、現代人も日中は太陽の下で過ごし、夜は月明かりのような光の中で過ごすことが理想で、体内時計がセットされます。また、睡眠を司るホルモン・メラトニンのもとになるセロトニンは太陽を浴びることで主に作られます。1日10~30分×3セット、通勤、ランチのときなどに光を浴びましょう。夜明るい所で過ごすとメラトニンが消去されるので、海外ドラマで見かけるような淡い光のリビングを見本にしてみて」(西川さん)。
05.上機嫌になる日中アクションでメラトニンの量を増加
睡眠の質をより高めるには?「睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンのもととなる、セロトニンを増やすことがポイントです。いい香りを嗅いだり、自然音を聞くなど、上機嫌になるアクションがセロトニンを増やします。とくに海や山での水の音や小鳥のさえずりなどの自然音は、10分聞くだけでストレスホルモン・コルチゾールを下げ、逆に愛情ホルモン・オキシトシンの分泌を高める効果も。と同時に、さらにセロトニンがアップ。またヨガ、ジョギング、ダンスなど、10分程度のリズム運動や歌をうたう、ガムをかむことでもセロトニンは分泌されます」(西川さん)。
〈右〉「地球の朝」をテーマにした日中に聴きたい自然音をセレクト。ハワイのカウアイ島や屋久島などで収録。Mu Atsu Sleep Sound Performance Up CD 2,000円、〈左〉「日中の過ごし方が良質な睡眠に繋がる」をコンセプトにした爽やかな香り。Mu Atsu Sleep Aroma Performance Up ブランドスプレー 100mL 3,500円/ともにムアツプラス(昭和西川)
06.お風呂、食事の時間で、入眠しやすい体温をコントロールして
睡眠は最初の3時間が重要なんだそう。「快適な入眠を促すには深部体温を上げて下げる必要があります。なので湯船には毎晩入るのがおすすめで、40度以下で10~15分つかると、約1時間~1時間半後に眠くなるしくみです。健康な人はお風呂に入ってすぐ眠れないのが普通で、いつでもどこでも眠れる人は睡眠負債が溜まっている可能性が。また胃腸が活発に動いているまま眠ると深部体温が下がり切らず浅い眠りに。食後2、3時間はあけることをおすすめします」(西川さん)。
07.寝室の環境を整えてノーストレスな睡眠を
「立っているときの美姿勢が正しい寝姿勢なんです。また寝返りしやすいことも重要で、自分に合った枕、硬すぎず沈みすぎないマットレス、天然のエアコンである羽毛布団、吸湿発散性&ストレッチ性のある長袖長ズボンのパジャマを選ぶなど、睡眠環境を整えると、より深い眠りにつけます。冬の快適な室温は16℃といわれていますが、それだと私は寒いので20℃以上で設定しています。湿度は一年中50~60%が最適」(西川さん)。ひとつひとつを見直すことで、睡眠の質が様変わり。
良質な睡眠で心身ともに健康に
光、香り、音など……生活環境が睡眠の質に影響します。睡眠不足の人は、まずライフスタイルを見直してみてくださいね。上質な睡眠で心身の健康を保ちましょう。
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◎イラスト/上坂じゅりこ ◎取材・文/荒木奈々
2022年mina3月号より