2024.12.11

年末年始のご褒美に! 永く愛せるものをひとつ「名品セレクション」

minaの過去号にて連載していた「名品セレクション」。
ロングセラーの理由を紐解く名品の歴史とともに、年末年始の自分へのご褒美買いにおすすめなアイテムをいくつかピックアップしました。これから先も時間とともに永く身につけていたい、「永く着られるスタンダード服」を探し求めてみて。

 

selection1 <ラベンハム レイドン>

1970年代当時のデザインが残る
軽量でストレスフリーな一着

 

1969年、ロンドンの北東部・サフォーク州に位置する小さな村で誕生したラベンハム。英王室のエリザベス女王に仕えていた創立者のエリオット氏が、保温と防汚のために馬に着せるホースラグを発案したことで、その歴史がスタートしました。それまでホースラグに使われていたジュート素材は重たく、雨に濡れると乾きにくいというデメリットがありましたが、エリオット氏が考えたキルティングのホースラグは、中綿にポリエステルを採用しているため軽く、ナイロン製でつるんとしていて肌当たりも抜群。たちまち上流階級の人々の間で流行しました。

 

馬とおそろいの上着が欲しいという乗馬愛好家の声に応え、1972年にはジレを発売。1980年代になると、ファッションアイテムとして一般市民にも注目されるようになり、ジャケットも作られました。いまやラベンハムの定番となったこのレイドンは、長年愛されてきたジャケットをスリム化したモデルで、2インチのダイヤモンドキルティングや斜めに設計されたポケット口、サイドに入ったスリットなど、アイコニックなデザインは1970年代のものを継続しているのだとか。上品なキルティングとラフさのあるコーデュロイを融合させており、きれいめだけでなくカジュアルな装いとも好相性。ひとつ持っているとあらゆるシーンで活躍します。

ラベンハム レイドン 55,000円/ラベンハム カスタマーサービス

 

 

 

selection2 <バブアー ビデイル>

乗馬用ジャケットとして考案された
ブランドのアイコンモデル

 

一生をかけて育てたいアウターでお馴染み、バブアーは1894年に英国で誕生しました。創業者のジョン・バブアー氏が、地元の漁師や水夫のためにワックスコーティングのコートをつくったことから歴史がスタート。撥水性に優れたそのコートは、瞬く間に人気商品となったそう。その後、風を通しにくく耐久性が高いことから、ライダー用ジャケットや軍服としても支持されるようになります。一方で、機能性だけでなく品のよさをあわせ持つ佇まいは、王族や貴族の目にも留まり、彼らが狩猟や釣りなどの野外活動をする際に選ばれたのが、バブアーのワックスドジャケットでした。そのような経緯によって、耐久性の高い日常着でありながら気品を兼ね備えた存在として広く認知されていきました。

 

現在、ブランドの代表を務める4代目はマーガレット・バブアーという女性。ベストセラーの多くは彼女がデザインしたもので、1980年に開発されたこのビデイルもそのひとつです。乗馬の際に着用することを想定し、それまで一般的だった着丈よりも短く仕上げたほか、乗馬中にも美しいシルエットを保てるように後ろの裾にはサイドベンツを施しました。さらに乗馬中、馬の背に接するジャケット内側の裾に馬の汗がしみないようポリエステル素材を採用。誕生当時の目的に由来するディテールはライフスタイルが変わった現代もビデイルを象徴するアイコニックなデザインとして大切に継承され、歴史を感じる一着としてマニア心をくすぐり続けています。

バブアー ビデイル 63,800円/バブアー

 

 

 

selection3 <ジョン スメドレー クルーネックニット>

最高級のウールで編み立てた
なめらかで着心地の良いニット

 

ジョンスメドレーは、1784年にイギリスで誕生しました。創業者は、ジョン・スメドレー氏と、看護師として有名なフローレンス・ナイチンゲールの叔父にあたる、ピーター・ナイチンゲール氏。創業地の豊かな水源を生かして、綿花の紡績と生地づくりからスタートし、18世紀後半になると毛織物業も手掛けるようになりました。住居に暖房設備が普及していなかった頃、真冬も暖かく快適に過ごせるようにつくったウール製のアンダーウェアが人気を博し、1888年に最先端の紡績機と編み機を使ってハイゲージニットがつくられました。きめが細かく美しいそのニットは、当時のイギリスで匹敵するものがないと言われるほど、高い評価を得たそう。製品を仕上げるための全工程を自社工場で行うこと、原料に最上級の品質を用いることを創業時からのポリシーとし、240年以上経った現在もその姿勢を変えていません。

 

一見すると普通のクルーネックニットですが、袖を通せばその違いに気づけるはず。ちくちく感のないなめらかな着心地は英国王室にも認められ、2021年と2013年には王室御用達の証であるロイヤルワラントも取得しています。また、袖や首まわりの生地を本体に縫い合わせる作業は、熟練の職人による緻密な手仕事によって行われており、一般的なニットと比較するとすっきり仕上がっているうえ、縫い目にズレがないため、洗濯機で水洗いをしても型崩れしないのが何よりもの魅力。シンプルなコーディネートを格上げしてくれる、最高級のハイゲージニットです。

ジョン スメドレー クルーネックニット 48,400円/ジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシー)

 

 

 

selection4 <リー オーバーオール>

労働者のための作業服が、機能性は
そのままでカジュアル着の定番に

 

公式オンラインショップで常に人気ランキング上位に入る、リーの定番、オーバーオール。製造が始まった1920年代初頭から1980年頃までは、作業着として多くの労働者たちを支えてきました。リーのワークウェアと言えば、とある自動車修理工の要望に応えてつなぎが作られるようになったという逸話がありますが、このオーバーオールも、フォーインワンポケットと呼ばれる胸元の多機能ポケットや、使用後の道具をしまえる腰下のハンマーループやスケールポケットなど、当時のユーザーの声が反映されたディテールが特徴。

 

現在販売されているものは、時代に合わせたマイナーチェンジはあるものの、1940年頃からデザインも素材もほとんど変わっていないのだそう。簡略化したりアップデートしたりすることなく、往年のディテールをそのまま残したこのオーバーオールは、リーの商品の中でも貴重な存在なんだとか。労働者のために生まれた作業着が持つ本格的なディテールは、80年の時を経た今、このオーバーオールのアイデンティティとなって、ヴインテージのような味わいを放っています。

リー オーバーオール 16,500円/エドウイン・カスタマーセンター

 

 

 

selection5 <パラブーツ ミカエル>

耐久性に優れたラバーソールを使った
フランスメイドのレザーシューズ

 

パラブーツは、フランスで110年以上の歴史を持つレザーシューズブランドです。パリから車で5時間ほどの距離に位置する小さな村の靴工房で、革の裁断師をしていたリシャール・ポンヴェール氏が、1908年に自身で革靴をデザインしたことからスタートしました。パラブーツ製品の核である、ラバーソールが誕生したのは1926年のこと。それまでは当時ヨーロッパで主流だった革製や木製ソールのシューズをつくっていたリシャール氏でしたが、渡米したときに、アメリカ人が履いていたラバーブーツを見て、自社のシューズのソールをゴム製に変更することを思いつきました。そして、ブラジルのパラ港から輸入した天然のゴムをアウトソールに採用。港の名前にちなみ、ブランド名をパラブーツと名付けたのです。天然ゴムを用いたソールは、革製や木製と比べて柔らかく、長時間履いても疲れにくいと評判を呼びました。クッション性に優れ、すべりにくいという性質から、農業者や郵便配達員などの労働者はもちろん、登山家にも愛用者が多かったのだとか。

 

パラブーツのアイコンである、このミカエルというモデルは、1945年に誕生しました。アルプスのチロル地方で生まれたチロリアンシューズが原型となっており、アッパーの縫い合わせ部分や側面から水が浸入するのを防ぐ製法を取り入れているのが特徴です。ファッションアイテムとしてはもちろん、機能的で歩きやすいデザインはビジネスシーンでも活躍してくれます。

パラブーツ ミカエル 92,400円/パラブーツ青山店

 

 

 

selection6 <グレンロイヤル サッチェルバッグ>

英国の通学バッグをルーツにもつ
品の良いショルダーバッグ

 

スコットランドで誕生したグレンロイヤルは、高品質なレザー使いに定評のあるレザーグッズブランド。英国では1000年以上も前から馬具に使われてきたという、牛革の中でも特に耐久性に優れたブライドルレザーを用い、ハンドメイドで製造しています。ブライドルとは英語で馬具のこと。格式高い乗馬という文化において、馬具のために開発されたレザーは、見た目の品格と、人馬の安全を守る耐久性の両方を兼ね備えたレザーです。加工の工程で、植物由来のタンニン剤を入れた槽に原皮を数か月間漬け込み、長い時間をかけてなめし、牛脂やミツロウを擦り込んで仕上げていることから、色の深み、光沢の美しさ、使い込むほどにつやが増す経年変化も楽しめるレザーなのです。

 

そんなブライドルレザーを使ったグレンロイヤルのバッグは、コーディネートに気品と風格をプラスしてくれる憧れのアイテム。なかでもこのサッチェルバッグは、英国で学生用として一般的な通学バッグのデザインを踏襲しているから、愛らしさも兼ね備えているのが特徴です。同ブランドでは、一般的なサッチェルバッグよりもやや小さいB6サイズに設計したり、ヴィンテージライクな真鍮のパーツを組み合わせたりと、大人向けにアップデートしています。重厚感とハリ感のあるレザーの品質が生きるこのサッチェルバッグは、一点投入でカジュアルコーデを格上げできる名品です。

グレンロイヤル サッチェルバッグ 9インチ 74,800円/GLENROYAL(BRITISH MADE 銀座店)

 

 

 

selection7 <金子眼鏡 ブロー>

クラシックなブローを
都会的にブラッシュアップ

 

精巧なつくりに定評のある金子眼鏡は、1958年に眼鏡の産地として知られる福井県鯖江市にて創業しました。日本で製造される眼鏡のうち、96%ものシェアを占める鯖江市では、細かなパーツづくり、フレームとなるプラスチックのプレスや切削、研磨などの各工程に専門の職人がいて、それぞれの工場で分業して製造するのが一般的。金子眼鏡の工場は生産効率重視の流れで分業化が進んだ一大産地にありながら、眼鏡づくりにおける200以上の工程を一貫して自社でおこなう希少な存在。分業体制だと難しいデザインも、デザイナーと職人が密に連携をとることで可能になり、高い品質を実現しています。

 

サーモントという別名でも知られるこのブローという形が誕生したのは1950年代。眉が薄いことに悩んでいたアメリカ海軍のモント将校が威厳のある顔つきに見せたいと、とあるメーカーにつくらせたというエピソードが有名です。金子眼鏡では、約30年前、このブローのデザインを元に、分厚くて野暮ったい印象の強かったレンズをシャープな形に変更し、透明感のある素材で製造すると、たちまち人気を呼び、同社を代表するモデルのひとつに。プラスチックとメタルを合わせたフレームは作業工程が多いため、高い技術力を要するそう。この眼鏡がまとうトラッドなきちんと感の裏には、同社が追求してきたハイクオリティで確かなものづくりがありました。

金子眼鏡 ブロー KV-117/BKGP 57,200円/金子眼鏡店 青山店

 

 

 

取材・文/名和里穂 ◎写真 / 奥山裕太(Ye/selection1・3・4・5)、志田裕也(selection2・6・7)

 

mina2021年11月号、mina2022年1月号、mina2022年11月号、mina2023年1月号、mina2023年2月号、mina2023年11月号より

 

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商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。

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