日本のメガネフレーム生産においてシェア90%以上を誇り、世界でもメガネの三大生産地に数えられる、福井県鯖江市。明治期より始まったメガネづくりは、今でも職人による分業にて、工程を簡略化せず、まち全体で行っている。どうして鯖江のメガネは高品質とうたわれ、世界中から求められ続けるのか、実際に現場を訪れてみた。
鯖江のこだわりのメガネ工房を訪ねる。
メガネブランド「OWNDAYS」の協力により、セルロイドフレームメガネを制作する工房を見学させてもらった。細かいパーツごとに分業でつくっており、今回伺った工房は3軒ほど。どの工房も、少ない人数でひとつひとつの工程を丁寧に行っていて、職人の技や、その目に光る厳しさを目の当たりにした。
今回お伺いしたのは、OWNDAYSのセルロイドフレームメガネ「千一作」の制作現場 鯖江市の職人によるOWNDAYSのハンドメイドのシリーズ。新作は厚みのある生地感が魅力。
メガネSENICHI33 上からブラック、ブラウンデミ 各¥20,000/OWNDAYS
「ひとつも失敗できない」次につなげていく分業だからこその緊張感
分業とは聞いていたが、こんなに細かく分かれているとは思わなかった。自宅を改装したような小さな工房で、少ない人数で、ひとつの工程を繰り返す。決して流れ作業ではなく、ひとつひとつ丁寧に目で見て、手で触って……職人ならではの厳しい眼差しが光る。
最初に訪れた『田中教作商店』は、セルロイドを大きな一枚板で仕入れて、フレームのサイズに合わせて切り出し、工房へ届けるメガネの生地屋。先代から「計算が得意だから材料を仕入れる役を任された」と聞かされているそうで興味深かった。
セルロイドを保管している倉庫。セルロイドは古くからあるプラスチック素材だが、燃えやすいなどの特性から取り扱い危険物に該当し、鯖江市でも扱っているのは2社ほどだそう。そして世界においては取り扱えるのは日本だけ!
『宮下オプティカル』は、機械でメガネのフレームを切り出し、研磨し、鼻パッドを取りつける。鼻パッドはひとつひとつ手で左右均等に取りつける繊細な技だった。
四角いセルロイドの板から、2台の機械で内側と外側が削られ、フレームの形が現れる。
研磨チップとともにフレームをドラムに入れ回転させ、切り立てのフレームをなめらかに磨く「ガラ入れ」という工程。フレームとともに磨き上げられた研磨チップがなんだか可愛い。
左右の鼻パッドを左右角度や高さを揃えてつける繊細な工程。完全なる手作業だ。
2代目夫婦、3代目の兄弟夫婦でやっているのは『吉洋眼鏡』。職人が多く、丁番やテンプルを取りつけ磨き上げる、仕上げに近い工程をいくつも担当していた。
丁番という、フレームとテンプルをつなぐパーツを埋め込む作業。職人がふたり隣に並び、左右を順番に埋め込んでいく。
テンプルの耳にかかる部分を機械で折り曲げる。力加減によっては折れてしまうこともあるそう。
フレームとテンプルをつないだときに少しはみ出る部分を機械でカット。吉洋眼鏡の2代目はリズミカルに両手両足を使って機械を作動させており、職人ならではの技の粋を感じた。
「ならし磨き」という、繊維でフレームを磨き上げ、光沢を出す工程。セルロイドが持つ素材の美しさを存分に引き出す、時間をかけて行う大事な作業だ。
どこで話を伺っても、ここまでつながってきたものを次につなぐ「失敗できない緊張感がある」という。しかしここはよくないな、というものがあれば「カバーしてやろう」という仲間意識も強いという。職人による厳しいこだわりとまち全体でつくりあげる温もり、どちらも宿っているのがメイドイン鯖江のメガネなんだと感じた。
◎Photo / Uehara Mitsugu ◎Special Thanks / OWNDAYS