能登半島の北西部に位置する石川県・輪島市。新鮮な海産物や干物が並ぶ「朝市」や、国内外で人気が高い「輪島塗」のイメージが強いかもしれませんが、輪島市の魅力はそれだけではありません! 2011年には「能登の里山里海」として、その豊かな自然や伝統が「世界農業遺産」に認定され、注目を集めました。この週末は、輪島の里山里海の魅力を探りに出掛けませんか?
網元が提供する絶品「ふぐ天丼」に舌鼓!
輪島市街から車で約20分、有名な白米千枚田(しろよねせんまいだ)を眺めつつ、たどり着いたのは地元の網元が運営するレストラン「輪島網元 とね」。網元だからこそ提供できる新鮮な魚介と輪島名物・ふぐを使った「ふぐ天丼」が有名なお店です。
おしゃれで開放感のある店内には、天井や壁の一部にちょっと小太りな可愛らしい漁師のキャラクターが。いろんな場所にあるので、注文を待つ間に探してみるのも楽しいかもしれません。
今回注文したのは、「網元御膳」。「能登丼」にも認定された「ふぐ天丼」に、新鮮なお刺身の盛り合わせ、ふぐたたき、茶碗蒸しなど、輪島の海の幸を堪能できる一品です。
まずは、名物「ふぐ天丼」をパクリ。サクッとした衣の下にある肉厚のふぐは、噛むほどにジュワッと旨味が口の中に広がり幸せな気分に。塩で余計な水分を抜くことで、このぷりぷり感を実現しているのだとか。こだわりを感じます。
新鮮なお刺身の盛り合わせ(※内容は日によって変わります)も絶品でした。暖流と寒流の両方が混じり合い、起伏に富んだ海底が多い輪島の海は、多様な魚やプランクトンが集まる生き物の宝庫。そこで取れた新鮮な魚を、こだわりの調理法でいただけるなんてなんとも贅沢ですね。
輪島網元 とね
住所:石川県輪島市町野町大川ル42–4
☎︎ 0768-32-0005
営業時間:11:00~14:00
休業日:水曜日
昔ながらの製法で作った輪島塩。アイスクリームは必食!
「輪島網元 とね」から車で5分程。海が綺麗な海岸沿いにある「塩の駅 輪島塩」では、揚げ浜式で作った塩を使ったおみやげの購入以外にも、「塩田体験(600円)」や「マイ塩ブレンド体験(1100円)」などさまざまな体験をすることが出来ます。
旨味たっぷりの塩に、能登の甘エビやわかめなどをお好みで加える「マイ塩ブレンド体験」は、3~4種類の調味料をピックアップし、乳鉢ですりつぶしてから塩で味を調え、ボトルに詰めれば完成です。ボトルは可愛くラッピングできるので、お土産にもピッタリ!
実際に塩田に入り、浜士と一緒に道具を使って作業を体験できる「塩田体験」も人気です。干潮と満潮の差が少ない輪島で、昔から用いられてきたのは「揚げ浜式」という製法。早朝に海水をくみ、砂地の塩田に撒き、日光で乾かした砂を集め、再び海水で洗い流したものを大釜でじっくりと炊き上げるという製法の流れを間近で見ることができます。
店内には主に3種類の塩や輪島塩を使ったお菓子が購入できます。500年前から続く製法で作られた塩は、まろやかな旨味で食材の味を引き立ててくれます。
「輪島塩」の楽しみのひとつが、塩をかけて召し上がるアイスクリーム。トッピングは「焼き塩」「唐辛子塩」「きなこ塩」で、何回でもお好みのものをかけることが出来ます。塩がアクセントや旨味となって、濃厚なアイスクリームの美味しさがさらに引き立ち、リピートしたくなる美味しさです。
お店の裏のデッキからは、日本海を一望することができます。お天気が良ければ、遠くに「七ツ島」という無人島を見つけることもできるので、ぜひトライしてみてくださいね。
塩の駅 輪島塩
住所:石川県輪島市町野町大川ハ17-2
☎︎ 0768-32-1177
営業時間:9:00~17:00 ※冬季は時短営業
休業日:12月~2月の平日
新感覚!米農家が作る米粉100%のもちもちベーグル
かつては「加賀百万石」とも言われた、米どころ石川県。2023年6月28日にオープンしたばかりの「こめとわとベーグル」は、そんなお米農家さんが営む米粉100%、グルテンフリーのベーグルを提供するお店です。
高台にあるお店の窓からは、青々と広がる日本海とその地平線を一望することができます。輪島市街から白米千枚田などの観光地に向かう道路のすぐ近くにあるので、朝ごはんやランチで立ち寄りやすいのも嬉しいポイントです。
いただいたのは、「プレーンベーグル」と「抹茶サンド(あんこ&クリームチーズ入り)」、そして、能登の酪農家が作った牛乳「のとそだち」を使った「バナナジュース」。ベーグルは、これまで体験したことのないもっちもちの食感とほのかな甘さがクセになる美味しさです。オーダーを受けてから店内で作るバナナジュースも、優しい味わいが印象的でした。
毎日、約10種類の焼き立てベーグルが並ぶ店頭。面白いのが、「Wチョコ」「抹茶(ホワイトチョコ入り)」、「アールグレイ(レモンピール入り)」といった定番洋風フレーバーの他にも、「しそ」「あおさチーズ」などのちょっと変わった種類もあるところです。
「原材料として100%米粉を使用しているので、意外と和のテイストも合うんですよ」と語るのは、店主の山下さんご夫婦。2016年に金沢からこちらに移り住み、お店をはじめた背景には、コロナ禍に伴う米価格の下落や肥料の高騰で、大変な米農家の現状があったと言います。
小麦粉を使わないグルテンフリーや能登にファーストフード店が少なかったことから、ベーグルを通して、棚田でとれた美味しいお米を食べて欲しいと思い、こちらのお店を開業されたのだそうです。
タイミングが良ければ、海に沈む綺麗な夕日をみることもできます。美しい里海を眺めつつ、いただく絶品ベーグル。なんとも満ち足りた気分になります。
こめとわとベーグル
住所:石川県輪島市大野町城兼37-69
☎︎ 0768-55-0001
営業時間:10:00~17:00
休業日:水曜日
Instagram:https://www.instagram.com/cometowato/
里山の魅力を五感で体験!「里山まるごとホテル」で癒やされる
昔ながらの懐かしさを感じる風景が残る、能登の里山。そんな里山の魅力をまるっと体験できるのが、「里山まるごとホテル」です。まずは、レストランやオリジナルのお土産が揃う築170年の茅葺庵(かやぶきあん)でチェックインを済ませましょう。
地域全体がひとつのホテルとなっている「里山まるごとホテル」でぜひ、参加したいのが「ガイドが案内する里山ツアー」。「里山とは完全な原生林ではなく、人の手が入った自然です。自然と人が共生している場所ですね」と語るのは、輪島の里山に惚れ込んで移住した、ガイド兼ホテルのオーナーでもある山本さんです。
ツアーの説明を聞いていると、歩いているすぐ側の草木が食べられることを知ったり、毎年行っている田んぼの神様を敬う祭礼が残っていたりと、さまざまな発見があります。地元のおじいちゃんやおばあちゃん(以下、じいじとばあば)の畑に入らせてもらい、新鮮な野菜を収穫できるのも魅力のひとつです。
とった野菜は、夕食でいただくことができます。驚いたのが、その美味しさ。キュウリの浅漬けひとつをとっても、噛む度に、しっかりと野菜の味や旨味が感じられ、全くの別物のような味わいです!
前菜、天ぷら、煮物、魚のメイン、肉のメインと食べ進め(※コースによって内容が変わります)最後にいただくのは、ばあばが囲炉裏で焼いてくれる焼きおにぎり。上に載せられている手作りの味噌も程よい甘さでとても美味しいんです。デザートには、季節のソースがかかったふわふわのレアチーズケーキが出てきて、大満足の夕食でした。
お部屋は、築150年の古民家をリノベーションした一棟貸し。窓の外には美しい里山の風景が広がります。サービスの手厚さも里山まるごとホテルの魅力のひとつ。ハーブの香りでリラックスできるバスソルトや、オーガニックコットンのフワフワのベッドなど、古民家の素敵な部分と贅沢なホテルステイの良いとこ取りが出来た気分になります。
印象的だったのが、「都会はお金がないと暮らしていけないけど、ここでは豊かな里山があれば生活に困らない。いつでも心の余裕を持てる」という地元の方の言葉。素敵なホテルステイと共に、「豊かさとは何か」についてもいろいろと考えさせられるステイでした。
里山まるごとホテル
住所:石川県輪島市三井町新保ハ28
フロントの古民家レストラン茅葺庵 石川県輪島市三井町小泉漆原14-2
☎︎ 0768-26-1181
営業時間:9:30~17:00
休業日:火・水曜日(レストランのランチ休業日。宿泊は火・水曜日も可能)
HP:https://www.satoyamamarugoto.com/
運営は、明治から続く漆器店。こだわりのメニューが揃うカフェ
輪島に来たからには、やはり立ち寄りたいのが朝市。毎月第2、4水曜日と正月以外は営業しており、開催時間も午前8時~正午と早起きが苦手な人にも嬉しい設定ですね。約400mに及ぶ朝市通りにズラリと並んだお店を見つつ、フレンドリーなお店の方との会話やショッピングを楽しみましょう。
朝市にめぐりに疲れたら、カフェでひと息。そんな時にぜひ立ち寄りたいのが、同じく朝市通りにあるカフェ「KALPA(カルパ)」です。
県内のコーヒー専門店と一緒に作り出した、オリジナルブレンドの豆を使ったコーヒーや、季節に合わせて世界各地から厳選した豆を取り寄せ作るスペシャリティーコーヒーは、どれも絶品の一言。コーヒーの味わいや香りによって、使う器の種類まで変えているところに、こだわりが感じられます。
輪島塗のカップで提供される、スペシャリティーコーヒー(440円)。とても柔らかな口触りで、身体の中からやさしく目覚めさせてくれるような一杯です。
一緒にオーダーしたいのが、人気のクレープ(440円~)。輪島の天然塩と、ローストアーモンドを混ぜ込んだサックサクの生地と、砂糖(焼きリンゴやオレンジなどから選べます)やバターの風味がたまりません。ドリンクと一緒にテイクアウトして、朝市をぶらつきながら食べるのも楽しそうですね。
「KALPA」を運営するのは、明治元年創業の八重門漆器店。店内には、漆器の他にも全国各地から集めた、素敵なお皿やカップが並んでおり、見ているだけでもワクワクします。
日本を代表する漆工芸品とも言える、輪島塗。その背景には、材料となる漆、檜(ひのき)などの木々を育てる豊かな森、北前船の寄港地として栄えた海、そして職人たちのあくなきこだわりがありました。永い間、脈々と受け継がれてきた伝統を、一杯の美味しいコーヒーと共に味わえるのが、KALPAの魅力です。
KALPA
住所:石川県輪島市 河井町2-72-1
☎︎ 0768-22-0036
営業時間:8:30~17:00 ※火曜と木曜は~12:00
休業日:水曜日
輪島の豊かな自然が生み出した、自由な和紙づくりを体験!
輪島塗の包み紙として、発展してきた輪島の和紙。なかでも、特に面白い工房があると聞きつけ、やってきたのが「能登仁行(のとにぎょう)和紙」です。
現在、工房の代表を務める3代目の遠見さん。さっそく、どんな和紙があるのか見せてもらうことにしました。
こちらは、里山に生えている草花を織り込んだもの。和紙ならではの味わいと、織り込まれた花の可愛さがあり、家のインテリアやプレゼントにもバッチリです。工房には、この他にも杉皮を使った和紙(普通は、こうぞを使う)や、山野草に海藻、貝、稲わら、田んぼの土など、自由な発想で生み出された和紙が沢山あります。
写真は、能登の名産で、輪島塗にも使われる珪藻土を使った和紙。和紙のなかに、輪島の里山・里海が持つ生命力が感じられる気がします。
工房では、「和紙づくり体験(1,500円~)」も開いており、国内外から和紙づくりに訪れる人が沢山います。工房の周りの草花を摘んで、和紙として漉いていくのですが、自分でいろいろ悩みつつ、摘んだ花や草が、美しい和紙に変わっていく様子を見ていると、なんだか子どもの頃に戻ったかのようなワクワク感を覚えるから不思議です。
こんな製作の楽しさと奥深さ、そして豊かな里山里海が、独創的で自由な能登仁行和紙を生み出しているのかもしれません。
能登仁行和紙
住所:石川県輪島市三井町仁行袋前
☎︎ 0768-26-1314
営業時間:10:00~17:00
休業日:日曜日
HP:https://www.noto-nigyou-washi.com/
さまざまな魅力が詰まった、輪島の里山里海。都会の生活に疲れた時、「綺麗な景色を眺めながら、美味しいものが食べたいなぁ」と感じた時は、ぜひ足を運んでみてください。豊かな自然と、地元の素敵な人たちが、温かく迎えてくれますよ。
◎撮影&取材&文/立岡美佐子
※店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。