他者に対して恋愛感情や性的欲求を持たない“アセクシュアル”をテーマに、自分の幸せとは何なのかを探していく映画『そばかす』が、12月16日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開される。
――最初に脚本を読んだとき、いかがでしたか?
私自身、世間の当たり前とされていることや常識に対して距離を感じたり、違和感を感じることもあって。この脚本を読んだときに、“周りが受け入れていることをそのまま自分が受け入れる努力をしなくていいんだ”って思えたんです。それに、アセクシュアルというセクシャリティについて知らないという方もまだまだたくさんいらっしゃると思います。この作品を通して認知が進むことに繋がれば意義があることだと思い、参加したいなと強く思いました。
――今作に参加するうえで、実際にアセクシュアルの方に話を聞いたそうですね。
“信じてもらえないことが一番苦しい”ということをおっしゃっていて。アセクシュアルであることをカミングアウトしたとき、差別を受けたり、態度が変わるということはなくても、“いずれ恋愛できるよ”とか“まだ本当に好きな人に出会っていないだけ”と言われてしまう、と。良心で言ってくれていたとしても、それは存在を否定されていることと一緒なんですよね。自分の思う普通を押しつけることが、誰かの心を苦しめるとがあるということをあらためて忘れないでいたいと思う機会になりました。
――物語のエンドロールで流れるのは、三浦さんが歌う主題歌『風になれ』。羊文学の塩塚モエカさんが楽曲提供を務めているそうですが、どんな楽曲になっていますか?
この映画のラストシーンの撮影をしていた時に、エンディングでモエカさんの作る音楽を聴きたいと直感的に思いました。私が今作で感じたことを伝え、映画を観た上で制作していただきました。“あなたはそのままでいいんだよ”と優しく背中を押してくれるような楽曲が完成したと思っています。実際に歌っていると、気持ちが楽になるんです。ぜひ映画と一緒に劇場で聴いていただきたいと思っています。
――そして12月14日には、ミニアルバム『点描』の発売も決定。こちらでは初めて作詞を担当した曲も収録されているんだそう。
直接的に言葉で伝えるのではなく、作品を通して歌や演技でメッセージを届けるという、ある種の“不自由さ”に魅力を感じていました。でも、たくさんのアーティストさんとお仕事をする中で、音楽を作っている方へのリスペクトが年々増えていき、その方達のことをもっと知りたいし、近づきたいと思ったんです。実際やってみると、結構楽しめた。これからもいろんなことに挑戦していきたいですね。
PROFILE
みうら・とうこ●1996年生まれ。2002年に『なっちゃん』のCMに出演し、話題に。その後『カムカムエヴリバディ』『ドライブ・マイ・カー』『エルピス―希望、あるいは災い』に出演。歌手としてもコンスタントに作品をリリース。主演映画『そばかす』が12月16日より全国公開、12月14日には2ndミニアルバム『点描』を発売する。
MUSIC
『風になれ』
主演映画『そばかす』のために羊文学の塩塚モエカが楽曲提供をした、美しくて優しいポップチューン。疾走感あふれる、爽やかなバンドサウンドと、彼女の温かみのある歌声がマッチした良質なナンバー。
Digital/配信中
ジャケット 89,100円/beautiful people(beautiful people青山店) その他/スタイリスト私物
◎撮影/川原﨑宣喜 ◎スタイリング/佐々木翔 ◎ヘア&メイク/秋鹿裕子(W) ◎取材&文/吉田可奈
2022年mina1月号より
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