映画コラムニストの新谷里映さんが厳選した、mina女子におすすめの作品を紹介します。
知らないことばかり……観て良かったと心底思いました
この映画の中心にあるのは、映画『ローマの休日』の新聞記者ジョーのモデルと言われるピーター・タウンゼンド大佐、彼の著書『THE POSTMAN OF NAGASAKI』です。英空軍の飛行隊長として第二次世界大戦を経験し、退官後にマーガレット女王とのロマンスが世界中で報道された人物……と書くと、とても劇的に感じるかもしれないですが、書かれているのは、唯一の戦争被爆国である日本について、長崎について、ノンフィクション小説です。タウンゼンドがこの本を書くきっかけは世界を旅しながら作家として生きるなかで、戦争被害にあった子供たちに関心を抱くようになったことでした。
長崎を訪れたとき、郵便局員だった谷口稜曄さんと出会い、谷口さんの戦争体験を綴ったのが、先に挙げた本です。そしてタウンゼンドの娘であるイザベルは、父の遺した本を頼りに長崎でその足跡をたどり、父の姿を追いかけた。それがこのドキュメンタリー映画です。
てっきり海外の監督が撮っているのかと思っていたのですが、川瀬美香さんという日本の女性監督でした。戦争経験のない世代の監督の視点は、第二次世界大戦で何があったのか知らないことを恥じるのではなく、知りたいという興味を抱かせてくれる。戦争によって、核兵器によって、人々の日常が奪われてはいけないということを改めて気づかせてくれる、いまこそ観るべき映画です。
シネスイッチ銀座ほか全国にて公開中
作品公式サイト:https://longride.jp/nagasaki-postman/
出演:イザベル・タウンゼンド、谷口稜曄、ピーター・タウンゼンド
配給:ロングライド
©The Postman from Nagasaki Film Partners
©坂本肖美
▶︎案内人は……
新谷里映さん
映画ライター・コラムニスト。音声プラットフォームVoicyにて『シネマのなかに見えるもの』配信中。
Twitter @rieshintani
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