土曜日の深夜に。日曜日の昼間に。映画にどっぷり浸りたい。そんなあなたを、映画コラムニストの新谷さんが、素敵な映画へナビゲート。今回のテーマは“大切な人と観たい、心あたたまる映画”です。「冬の季節、マフラーやストールにくるまれるとその暖かさにほっとしますよね。心も同じで、感動的な映画を観ると心がじんわりと温かくなります。今回は、冬の季節にぴったりな心あたたまる映画を3本ピックアップしました」(新谷さん)
『セレンディピティ~恋人たちのニューヨーク~』
運命の出会い、運命の恋、運命の恋人──ラブロマンス映画には、“運命”という言葉がよく使われますよね。映画を観ている間はその運命を信じていても、観終わって現実に引き戻されると「やっぱり運命なんて映画のなかだけよね……」と冷めてしまうこともあります。
けれど、「幸せな偶然」という意味のタイトルがつけられたこの映画『セレンディピティ』は、偶然のなかに運命があって、その幸せな偶然に自分が気づけるかどうか、信じるかどうかなのね、現実のあちこちに実は運命は隠れているのねって、主人公のジョナサン(ジョン・キューザック)とサラ(ケイト・ベッキンセイル)が教えてくれる。
彼らは、クリスマス前のデパートで同じ手袋を手にしたことで偶然に出会います。普通なら、そこから何か始まることはないけれど、ふたりのあいだに“何か”特別な感情が波打ち、“幸せな偶然”という名前のカフェ“セレンディピティ3”で会話を楽しみ、その後に訪れる偶然の再会が本当に運命なのかを試そうとする。SNSで簡単に連絡がとれてしまう現代では想像できないような彼らのその試みはとてもロマンチックです。
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じんわりと心に沁みる『ラスト・クリスマス』
クリスマスの定番ソング、いろいろありますが、ワム!の『ラスト・クリスマス』は恋を重ねるほど、大人になるほど、心に沁みるものがあると思うんです。
この映画は、タイトル通りワム!の曲をモチーフにしたロマンチック・コメディですが、歌詞から連想する恋愛とはちょっと違う恋愛模様が描かれます。しかも物語のなかにある仕掛けがあるので、できれば前情報は極力ナシで観るのがおすすめです。
ネタバレにならないところで簡単に説明すると──主人公のケイト(エミリア・クラーク)は、ロンドンのクリスマスショップで働いていますが、何かが原因で、仕事もプライベートも思うように行かない……。そんなある日、彼女の前にトム(ヘンリー・ゴールディング)というちょっと不思議な青年が現れて、彼の何気ない彼の言動がケイトを元気づけていく。トムの優しさが、めちゃくちゃ素敵なんですよね。仕事で落ち込んだとき、失恋して悲しいとき、自分の前にも彼のような人が現れてくれたらって、完全に惚れちゃいます。けれど、トムがケイトの前に現れたのは理由があって……。あたたかい涙を感じる人、多いと思います!
(2021年12月22日現在は配信中)
大切なものに気づける『天使のくれた時間』
人生は選択の連続だからこそ、「こんなはずじゃなかったのに……」と過去を振り返り、もしもあの時、別の道を選んでいたらどんな人生になっていたのだろうと、別の道を想像することもあるのではないでしょうか。
ニコラス・ケイジが演じるこの映画の主人公ジャックは、ウォール街で成功し社長として誰もが羨むような生活を送っています。けれど、仕事優先で生きてきた彼にはクリスマスを一緒に過ごす家族はいなくて。そんなジャックが人生を見つめ直すチャンスを掴みます。クリスマスの朝目覚めると、まるで別の世界だったのです。
それは13年前に別れた恋人ケイト(ティア・レオーニ)が妻で、小さな子供がふたりいる、仕事も社長ではなくセールスマン、何もかも違う設定の世界でした。最初は自分の身に何が起きたのか戸惑い、元いた世界に戻りたいと願うジャックでしたが、ケイトと子供たちと過ごすことで、本当に大切なものは何かに気づいていく。クライマックスのジャックの告白は、人はこんなにも変われるのねってジーンときちゃいます。とてもファンタジックな物語ではありますが、ジャックを通して観る人もまた自分にとっての大切な気づきを得ると思うんです。
(2021年12月22日現在は配信中)
この冬、映画で心をあたためて。
あなたの大切な人は誰ですか? 家族、友人、恋人……。今、頭の中で思い浮かんだあなたの大切な人と、心あたたまる映画を一緒に楽しんではいかがでしょう。ぜひ、素敵な週末を。
◎文/新谷里映 ◎イラスト/moeko ◎撮影/田村昌裕(FREAKS) ◎スタイリング/渡邉恵子(KIND) ◎ヘア&メイク/猪股真衣子(TRON) ◎モデル/松木育未